米、国産優遇鮮明に:2021年7月30日 日経新聞

米国政府は、政府が調達する製品は米国製部材を75%使うようにする規制案を発表した。これは、政府調達で米国製を優遇する為の規則「バイ・アメリカン法(Buy American rules)」の強化である。税金が投与される商品については、その部材の米国製の比率を現在の55%から75%に引き上げるものだ。55%は即座に60%に引き上げ、2024年1月までに65%、2029年までに75%に引き上げるとしている。但し、現時点ではあくまで案である。

現在は、製造企業が55%を満たしていると、レポートするだけで、実際にどうなのかは、調査がされていないようだ。今後は、それを確認する、としている。企業へは部品の詳細の報告を要求するとしている。

これに対し全米商工会は「非効率でコストがかさみ、最終的に逆効果を招く」と、反対の意向の声明を出したとされる。

内向きの閉鎖経済とする流れは、今後も変わらないだろう。現在のコロナ禍は、この姿勢を強く後押しするものだ。

では、これが日本にどう影響するのか?という点を考えてみたい。

【ポイント】

  1. 米国製の製品価格が上昇する(米国の物価上昇)
  2. 日本国内での物価が上昇する
  3. 日本は物品の確保すらままならない(日本のモノ不足)

1.は容易に想像できるだろう。これまで労働コストの安い国々から安価に調達していた部品の価格が、労働コストの高い米国産となり、その賃金は価格に転嫁される。

2.は、現代ではあらゆる物がグローバルに繋がっており、経済大国米国の動きは、他国の製品価格にも影響を与える。簡単に言うと、米国内のあおりを受けて、他国製品の価格も高騰する。ただし、例えば、全ての物が日本国内で完結するものであれば、価格は変わらない。すぐに思いつくのがお米だと思うが、果たして日本国内で完結しているのだろうか?肥料はどうだろう。私は、肥料の原産国や労働を伴った国を調べていないが、完全に国内で完結しているものを探すのはかなり難しいと思う。

3.が最も怖いものである。新たな貿易圏に日本は含まれない、という事だ。つまり、今、当たり前に輸出入を行っているが、これが当たり前ではなくなる可能性がある。日本には貿易ルートが存在しないだ。どの国から見ても、貿易相手国として不適切という事だ。信用がないからだ。仕入れる為のおカネもない。金融的に言うと、「信用リスク」(クレジット・リスク)が高いということで、日本が輸入する為には、クレジット・スプレッドを上乗せ(日本から見た輸入価格が相対的に他国よりも高い)というプライシングがされる。これは国債の金利にそのまま反映されるはず。

日本が世界から相手にされず、モノの確保に困るなんて、想像が難しいかもしれない。しかし、あり得ないことが起きるのが世の中だ。誰かが気付いて警鐘が鳴らされたものは、これまでほぼ全て現実となってきた。年金問題、温暖化…。

物価上昇を裏付ける事象が世界で起きている。一方で、日本国内の賃金は世界的に見て、下落傾向という少数派だ。物価が上がる一方で賃金が変わらないと、生活は苦しくなる一方だ。

さて、この難しい局面にどう対処すればいいだろうか?

一つの方法は、海外で稼ぐ事だろう。簡単に言うと出稼ぎだ。或いは、リモート・ワークが当たり前になった今、越境リモート・ワーク(海外の企業に所属し海外企業から給与を受け取るが日本国内在住)というのも可能だろう。重要なのは、海外でも必要とされる人材になる事だ。
※テレワークと呼ぶのは日本だけ。英語では”remote work”というのが普通。

その為に、英語が話せることは”Must have”(必須)だ。機械翻訳がある、と主張する人もいるが、実際の現場では、日本語を英語に訳す時間など、待ってくれない。そんな人材ならば、いくらでも代替可能な人材が存在する。そして、特に外資などは、簡単に人材を置き換えるのだ。

そして、世界共通で使えるものの一つがプログラミング・スキルだ。Pythonなど、うってつけての技術だろう。言語が異なっても、数学同様、必ず同じ文法で記述される。

豊かな生活は必ずしも必要ではないが、生きる為には食わなければいけない。日本は、もはや1億総中流ではないのだ。食うための手段を早く身に付けて困る事は何もない。

代表取締役 白鳥高文

<参考文献:外部サイト>

CNN: https://edition.cnn.com/2021/07/28/politics/biden-buy-american/index.html
「貧乏国ニッポン」加谷珪一著 幻冬舎(2020)