物価は上昇なのか?下落なのか?

2021年7月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年同月比で0.2%下落した。
ただし、これは携帯料金の値下げの寄与が大きい。ある経済評論家によれば、携帯料金の影響を除くと、少しプラスだろうとのことだ。(巷で名声を得ている経済評論家など、そもそも信用できないが。「『絶望を希望に変える経済』A.V.バナジー、E.デュフロ著 日本経済新聞出版」)

また、2020年7月といえば、「Go TO トラベル」の時期にあたり、この影響で宿泊料は前年同月比+17.3%上昇した(消費者物価指数への寄与度ではない)。

総務省発表資料をよく読むと、総合指数は前年同月比で0.3%の下落となったが、これは、携帯料金の値下げで指数が1.09ポイント下げられ、宿泊料で0.15ポイント上げられたことになっている。

違和感は多くの場合事実だ

ここまでで、何か違和感を感じるのは私だけだろうか。
この指数がそもそも、意味があるのだろうか?
なんのための数字なのだろうか?目的は何?

携帯料金の値下げは確かに大きかったが(料金が前年同月比で39.6%下落)、それだけで指数が大きく下押しされてしまう。また、宿泊料金と言っても、およそ殆どの人の生活とは無関係である。勿論、連続的な指数の算出は重要だが、今回も携帯料金のウエイトが変更されたり、そもそも不連続な指数である。指数に組み入れられる品目も時代と共に変化している。

はっきり言って、日常生活からかけ離れた指数だ。

「物価は下落しました」と言われ、納得する人がどれだけいるだろうか?
一方で、「物価は下落しました。国の統計がそう発表しました。」と言ったらどうだろうか?

マスコミの責任も大きいと思う。この数字だけで「物価下落→デフレ→景気が更に後退」という論調には、本当に呆れてしまう。
自分で考えて、本当に伝えるべきものは何か、を検討すべきではないか。

本当に伝えるべきことは、「物価は上昇している。しかし、今後も日本は給与水準の増加は望めない」、ということだ。

消費者物価指数という、国が作ったものは、「その人達の都合がいいいように作られたもの」だ。
つまり、物価は上がっていない、と国民に信じこませることで、無策の政府の批判をかわそうとする、既得権益者に都合にいいものだ。その中には、時代の変化に対応してこなかった(しようとしなかった)、労働者を搾取する無能な中小企業経営者も含まれる。彼らにとっては、物価下落は、自分の懐を肥やし、従業員の賃上げを拒む、絶好の武器となるのだ。これらの頂点に君臨する権力者は、当然、国ともつながっている。

総務省の消費者物価指数の発表資料の表現からは、「デフレには陥っていない。物価が下がったとしても、それは一過性のもので、改善(物価上昇)に向かっっている」という意思が読み取れる。勿論、数字は事実であり、変えられないが、日本語は作者の意図を反映する事が可能だ。

権力や威信のある機関が発表するものは、疑う事なく信じてしまいがちだ。しかし、思い出して欲しい。私たちが感じる違和感は、多くの場合、正しいのではなかろうか。個人の感性や能力に勝るものはないのだ。私はそう信じている。違和感を感じたら、どんなに強い相手であっても疑ってほしい。

自分で確かめることの重要性

世の中にはウソが多い。この場合のウソというのは、作り話の事を言うのではない。その捉え方という意味だ。
さすがに日本では数字の捏造(ねつぞう)などは無いだろう(そう信じたい)。
残念ながら、「日本の」マスコミは全て同じ方向を向いており、捉え方は一つしかない。一番頼りになるのは、自分自身だ。自分で考えることだ。

この時、役に立つのがデータ分析の技術だ。データ分分析は、誰でもトレーニングで身に付けることが出来る。何か新しい事を生み出すのは難しくとも、データから何かを読み解く技術は、誰でも習得可能だ。ただし、興味がある、という前提がいる。

自分で確かめることの重要性を思い出してほしい。そこに、技術があると、時間も節約できる。私は、その技術を全ての人に安価に提供したいと考えている。

ウソを見抜くZ世代

幸いなことに、Z世代は気付いている。世の中にはウソが多い事を。
彼らは、多くの意見に耳を傾け、反対意見であっても聞く耳を持つ。彼らの観察力はとても鋭く、簡単にウソや書かれていない事実を見破ってしまう。例えば、「あぁー、この人バズりたいのねぇ」など。

そんなZ世代には大いに期待をしている。私はX世代であり、彼らから見れば、「おっさん」というくくりにされてしまうだろう。しかし、X世代は、日本の政治に翻弄された世代であり、この先も見通しはとても暗い。常に、年配者の為の政治を押し付けられた世代だ。しかし、X世代は覚悟を決めていると思う。「自分たちと同じ思いはさせたくない」と。これまでは、高齢者に有利な政治であった。とくに金銭面に関しては。X世代は諦めと同時に、「今後も割りを食ってもいい。いや、割りを食うだろう。だけど、Z世代からは良くしたい。」と思っているのではなかろうか。少なくとも私はそう思っている。

デジタル・ネイティブな彼らに、データ分析は親和性が高く、最高の武器になるのではなかろうか。それに、彼らの個人が持ち優れた能力が加われば、日本の見通しも明るくなる気がしてならない。

【参考資料】

総務省統計局HP 2020年基準 消費者物価指数 全国2021年(令和3年)7月分(2021年8月20日公表)
週間ダイヤモンド 2021年8月28日号 安すぎる日本
Yahoo!ニュース 2021年8月21日 バターに小麦粉、コーヒーも…「最近、食品の値上げが止まらない」本当の理由: 加谷 珪一